◆◆ 『侍ジャイアンツ』 の 各回ごとのStory (第9話) ◆◆


番組名 『侍ジャイアンツ』
放送局 読売テレビ放送株式会社 (YTV)
放映日 昭和48年12月 2日(日)
放映時間  夜 7:30 〜 夜 8:00


第 9 話    『マウンドの報酬は苦いぜ!』

  「ここでホームラン、かっ飛ばしてやるぜっ!!」

予告ホームラン宣言をぶちかました蛮に打たれまいと力んだのか

7回まで好調だったロッテの大藤は3球連続でボールを出してしまう。

先輩の富樫たちは、予告ホームランなんてどうせ蛮のコケ威しで

脅かしておいてフォアボールで出塁するというのが狙いだったんだろう

と陰口を叩くが、そんな富樫たちを尻目に蛮は、4球目ワンバウンドで

入ってきた球を強引に引っ張って打つ。

打球はフェンスに当たり、2塁止まりかと思われたが、蛮はワンエラーを

強引に誘い、見事予告(ランニンク゜)ホームランをやってのけたのだ。

しかし、2度も続けてスライディングをした為に、せっかく治りかけた目の

上の傷が開いてしまった。

今までの好投に加え、このホームランでは、まるで蛮の独り舞台だと

ますます不愉快になる富樫たちだが、岩倉には何か策があるらしい。

1番・2番と三振の後、続く3番岩倉も見送りの三振で、あっと言う間に

チェンジとなり、八幡に傷の手当をしてもらっていた蛮は絆創膏も貼らず

マウンドに戻ろうとする。こんな傷は、水で冷やせば大丈夫とばかりに

目の前のタオルを傷口に当てた蛮だったが、途端にひどく苦しみだす。

慌てた八幡がタオルを手に取ると、それはなんとアンモニア漬のタオル

だったのだ。

誰がこんなものを置いたのかと怒る八幡に、打席から戻った岩倉が

白々しく声をかける。 「俺のタオルじゃないか、どうしたんだ?」

岩倉は、そのアンモニア漬のタオルを打ち身を冷やすのに使っているの

だと言う。それをうっかり蛮のタオルと取り違えてしまったのだと謝るが

当然のことながら、初めから岩倉が仕組んだことだった。

出るのか出ないのかと中尾監督に急かされ、八幡は自分をリリーフに

と申し出るが、蛮は自分が投げるんだと、そのままマウンドへ向かう。


しかし、汗でアンモニアが目に入り、左目が見えない上に、ジンジンと

痛みが走り、思わず力が入ってボール球の連続となる。

12球ストレートのノーコンボールで、3者続けてフォアボール・・・。

見かねた八幡は、再び中尾監督に訴える。

左目が見えないのだからこれ以上は無理だと言う八幡に、中尾監督は

一喝する。

  「自分の不注意で招いたピンチじゃないか! 自分の力で乗り越え
  ない限り、これから先のマウンドの孤独には耐えられん。
  ・・・それが川上監督の親心でもある。」

満塁のピンチとなった蛮は、ロッテの4番打者・安井をバッターに迎え、

土佐にいるはずの憧れの女性・美波理香の幻を見る。

  「弱虫! 何を怖がってるのよ! たかが片目が見えないくらいで。
  男なら両目をつぶって投げてごらんよ!!」

幻の理香にそう言われ、蛮は目を閉じる。 ・・・見える!

こうして、目をつぶって投げた蛮の球は見事ストライク。 

頼りにならない左目を捨て、心の目・「心眼」で投げる蛮の投法を

実況のアナウンサーは『座頭市投法』と名付けた。

続く2球目もストライク。 しかし、ピッチャーは目が見えないんだから

走れ!とのロッテ側の指示に、ランナーは一斉にリードを取り、チャンス

を見計らって走り出す。

しかし、蛮はランナーの足音を耳で聞き取り、するどい牽制球を投じた。

それならばと打者の安井はバントをする。素早く反応した蛮がすぐに

キャッチャーへ返球し、ホームでアウトとなるが、1塁はセーフで、依然

満塁のピンチは続いていた。

富樫ら内野手は、示し合わせて前に出る。 バントシフトだ。

内野手たちのスパイクの音に惑わされて、コントロールが乱れる蛮。

余計なことをするなと喰ってかかる蛮に、富樫は「俺達だって一軍行きの

テストにパスしたいんだ!」 と怒鳴り返す。

イライラする蛮の投げた球は打者の頭近くに外れ、避けようとした打者の

バットに当たり、それが蛮の右目を直撃。

はじき飛ばされ、仰向けにひっくり返った蛮だったが、執念でホームへ

返球する。 ・・・が、セーフ。 1点をとられ同点になってしまう。

マウンドに倒れ込む蛮の耳に、ピッチャー交替を告げる中尾監督の声が

遠く響いた。


リリーフに立った八幡は頭脳的なピッチングで、無事火消し役を果たす。

ベンチに寝かされていた蛮がようやく気付いた時、打席に立った八幡は

追いつめられていた。 

ここでホームランでも打てば一軍昇格も間違いない、と富樫らが冗談の

ように言ったその時、八幡は見事サヨナラホームランを打ったのだった。

ホームへ戻ってきた八幡に、川上監督は一軍昇格を告げた。

選手たちに取り巻かれ、祝福される八幡。

そんな選手たちを見ながら、金田監督はつぶやいた。

  「川上さんも、ええピッチャー拾ってきたもんやな。
  あのチビ一人にひねられたようなもんやからな。」

それを聞いた実況のアナウンサーは、八幡のことではないのかと意外な

表情をした。

「当たり前やないか。」と言い残し、立ち去っていく金田監督もまた、川上

監督同様、蛮の素質を見抜いているようだった。


グランドでは、蛮も思わず駆け寄って八幡を祝福しながら、まるで自分の

ことのように喜び、涙ぐんでいた。

  「俺の分まで一軍で働いてきてくれや、先輩!」

  「ありがとう、蛮!」


  この回で、とても不思議なのが・・・ 何故、
   蛮はアンモニア漬のタオルで傷口を拭いて
   しまったのかってコト。
   岩倉のタオルはオレンジ色で、
   蛮のタオルは赤 ・・・と、色は違うけど、
   確かに、蛮の性格からして
   そんなのは見ずに拭いたかも。
   或いは、自分のじゃないって分かってても
   気にしないで借りちゃうかも。
   でも、アンモニアって、相当匂うよね?
   足とかならまだしも、
   目の上を拭こうって言うのに、
   その匂いに気付かないなんて・・・!? 
  それから、もう一つ・・・。
   アンモニア漬のタオルで拭いてしまった後
   どうして、水で洗い流すとかって処置を
   しなかったのかしら?
   トイレがあるくらいだから、水道くらいあると
   思うし、もし万が一水道がなくても
   多少のお水くらいは用意してあると
   思うんだけど・・・・。
   ねぇ?   



   
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